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  ○月×日 中村航『夏休み』読了
 

 どうなんだろう?こういうの。心得た人たちの心得た生活、とでも言えばいいか。村上春樹以来、そういうライフ・スタイルをまっとうしようとする人々を描いた小説が少なくない。実際のところ、“心得た人たちの心得た生活”を目の当たりにすればかなり心安く感じるだろうし、たとえば「まずい料理を残すっていうのもひとつの見識だと思う」と他でもない村上春樹が書いている通り、そういうライフ・スタイルを指向することは地味な向上心をそれなりに必要とすることだと思う。僕自身、地味な向上心を持つことにやぶさかではない。しかし、そういう人たちが「僕は魅惑の空間の青写真をうっとりと描いた。それはその小規模さゆえに、余計、僕の心をとらえた。僕らはいつだって、そういう小空間が大好きなのだ」なんていうふうに語ると、その“僕ら”に自分は加わりたくないとかなり強く思う。言い換えれば、物語中、ドライブに一番合うとされたピンク・フロイドの音楽で叙情的なギター・プレイを聞かせているデイヴ・ギルモアが現実には“デブ”ギルモアになっていたりする、というようなことだ。

 そんなことを思いながらも読み通せてしまうのは、達者な語り口のゆえだろう。主要な登場人物のひとり、吉田くんに“カメラの分解”という興味深い趣味を持たせた手柄も大きい。この作家の描く男性主人公がどんなふうに年をとっていくのか?とりあえず、追いかけてみたくなる。

 

 ところで、この本を買った浜松町駅ビル内にある『談』という本屋では、最近注目されている新進男性作家たちの単行本を10数冊ひとつのテーマのもとに並べて見せていた。そのテーマというのが、表紙の装丁に空を写した写真を使っている単行本ばかりを集めているのだ。その代表は、言うまでもなく『世界の中心で愛をさけぶ』である。わざわざ帯をはずしてその表紙の装丁を見比べるように平積みにしてあるのだから、その意図は明らかだ。そんなふうに並べられてみると、最近注目されている新進男性作家はみんな空を見上げるような小説ばかり書いているような気がしてくる。象徴的にも現実的にも、空を見上げることより足元をみつめることが多い僕などは、そういう意味でも時流からはずれているのだろう。それはともかく、この『談』浜松町店、初めて覗いた本屋だったが、次はどんなことをしてみせるのか結構気になる。

(この本のご購入は↓)

http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_top.cgi?aid=p-yuibo81886

クョスコニョ    [1] 
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