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○月×日 中村一義取材 |
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ソロ名義では約10年ぶりとなるニュー・アルバム『対音楽』についてインタビュー。新作は、彼の音楽的なルーツであるベートーベンの音楽と徹底的に向き合うことを通して、「自分にとって音楽とはどういうものなのか?」さらには「自分とはどういう人間なのか?」ということを突き詰め、その音楽的思索の成果を月並みでないスケールで音楽化している。
「ベートーベンは、ずいぶん前に死んじゃった人だし会ったこともないから、僕がどれだけ彼のことをわかってるのかわからないですけど、音楽を聴いていると、“こういうことだよな”となんとなく思う部分と“やっぱりわかんねえな”と思う部分とがはっきりするというか。だから、このアルバムを作り上げることができたんだと思うんですけど。で、こういうことを言うのはおこがましいんですが、ベートーベンって音楽に対する姿勢が僕とけっこう似てるんですよね。嘘が嫌だし、どこか暴く感じだし。それは、ベートーベンが自分にとって音楽の親だからそうなんだろうと思うんですけど。だから、対ベートーベンということは結局、対自分ということにもなるんであって、ということはベートーベンと向き合って暴くということは自分を暴くことに他ならないというか…。普通に生活者として生きていると、“ここは見せたくないよ”というところが誰にでもあると思うんですけど、でもベートーベンに向き合うということは裸一貫になる、全部さらけ出すということになるので。しかも、そのことを執拗に迫ることになるので、そういう意味で対ベートーベンも対自分もいっしょっていう」
アルバムの収録曲は、ベートーベンが遺した9つの交響曲に対応していて、だからアルバムは「歓喜のうた〜合唱」でクライマックスを迎えることが最初から決まっていたとも言える。
「最後に『合唱』があることはわかってるわけなんですよね。このプロジェクトを始めたときできていたのは「ウソを暴け」という1曲だけだったんで、だから僕が作った始まりと『合唱』という終点があるということを考えて、自分にとっての音楽がどういうものなのかということを、言葉だけでなく曲が進んでいくなかで音でも伝えることができるかなあということを考えながら作ってました」
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