昨年10月にオーストラリアで行われたラグビーのワールドカップに出場した日本代表の戦いぶりをレポート/総括した1冊。タイトルの"原論"は日本ラグビーの何たるかを解説しているのではなく、日本ラグビーに原論と呼べるようなビジョンを提起している、と受け取るべきだろう。 ラグビーは、サッカーに比べて局地戦、密集戦が多く、しかもそこでの攻防が試合の帰趨を決することが多々ある。それだけに、外から見ている分にはどうしたんだろう?と思うことも少なくないわけだが、本書ではたとえば局地戦、密集戦の極みとも言うべきスクラムにスポットを当て、今回の大会で日本チームのスクラム・ワークをリードしたサントリーの長谷川選手らへの取材を通してワールドカップの試合で日本チームのスクラムにどんなことが起こっていたのか、その一端を伝えている。そして、そこに今回のチーム全体の成果と問題を浮び上がらせて見せる。極端に低かった前評判は見事に覆したものの、結果としては4戦全敗に終わったその戦いぶりにすっきりしなかった思いにひとつの回答が与えられた感じだ。 また、それとは別に印象的だったのは、日本らしいラグビーとは?という問いに対する神戸製鋼・伊藤剛臣選手の答えだ。 「日本人がやっていれば、それが日本人のラグビーだと思いますよ」 この答えを受けて、永田氏は、日本らしいラグビーとは明確なビジョンのもとに個々の才能を組み合わせていく「具体性の集積」として生まれる、という考えを述べている。その指摘は、現在のサッカー日本代表が抱えている問題にもあてはまるだろう。ジーコは明確なビジョンを示さないといけないと思う。 というわけで、ラグビー好きなら一気に読み切ってしまえる面白さだったが、それにしても1700円はちょっと高いよなあ、と思ったりもする。ラグビーの本って売れないだろうから、仕方がないのかもしれないけれど。
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