ティム・オブライエンの小説は基本的に重苦しい。今回も、決してハートウォームな話ではなかった。つまり、予想通り重苦しかったわけだ。が、読まなきゃ良かった、なんてことは全然思わない。重苦しい現実に日々苛まれているにもかかわらず、だ。彼の小説には、ただ重苦しいだけではない、読まずにはいられない何か麻薬的な吸引力がある。そして、その吸引性は、たとえば"鮮やかな手並みに翻弄される"といった感じのスマートさとは無縁の、見事にゴツゴツとした執拗さで貫かれている。洗練されたものよりも無骨なものに信頼を寄せてしまうのは僕の個人的な性向だが、それにしても彼の小説の説得力はそうしたデコボコに負っている部分が大きいと思う。今回も、みぞおちのあたりになんとも言いがたい、しかし確固とした感覚が残っている。その感覚は時間をかけて僕のなかで消化、あるいは昇華される。
とりあえず今夜は、小説のなかにディランの「レイ・レディ・レイ」が出てきたこともあって、その曲が収録された『ナッシュビル・スカイライン』を聴いて眠る。
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