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  1月17日 くるり@日本武道館
   昨年9月のアルバム『坩堝の電圧』リリースを受けてスタートしたライブ・ツアー”国民の性欲が第一”は、12月の衆議院総選挙での自民党圧勝を経て日本武道館公演を迎え、タイトルは”国民の成長が第一”となった。あるいは、日本武道館という会場の格式に配慮して”性欲”という言葉を避けたのかもしれない。もちろん、本当のところはわからないし、岸田繁だってわかっていないのかもしれない。が、人々の無意識に鋭く感応し、あるいは人々の無意識に深く訴えかけるくるりであってみれば、単なる語呂合わせでしかないのかもしれない些細な言葉の変化に無垢の祈りが宿っていることも有り得ない話ではない。国民の成長が第一。バンド名とともにこのタイトルが大きく掲げられた会場正面の写真を無邪気に撮影するファンの人たちの心を、そのフレーズがふと捉える場面がきっとあるだろう。それは、例えば落語の考えオチのように、日常生活のなかのどうということはない出来事に立ち会ったときであったりするだろう。湯たんぽの温もりのように優しくゆっくりと身体を温めてくれるこの日のライブを見終わった後で、そんなことを思った。
 そして、ライブの冒頭近くのMCで岸田が冗談めかして「ライブハウス武道館へようこそ」と語ったのだけれど、その言葉の元ネタとなったBOOWYの初武道館公演の稲妻のように時間を駆け抜けていくステージとはじつに対照的なライブだったなとも思ったりした。それは、岸田たち自身も自分たちのライブがその伝説のバンドとはずいぶんと芸風が違うことを承知しているからこそのMCでもあったろうが、同時にBOOWYに勝るとも劣らぬバンドらしいバンドであるという自負もあってのことだろうと推測する。最新アルバムは新人バンドのようなバンドであることの高揚と、バンドという形をためつすがめつしながら様々な試行錯誤を積み重ねてきた長年の成果とが結晶化した作品だった。そのお披露目ツアーの大団円が、バンドというものの恍惚を伝えるステージとなるのは当然と言えるだろう。
 もっとも、この日はサポート・ドラマーあらきゆうこを加えたレギュラー・ツアーの5人編成から、最大では高田漣、堀江博久、権藤知彦、遠藤由美と渕上義人のサスペンダーズ、そしてボボを加えた11人編成となるバンドだった。この大所帯バンドの演奏を見ていて思い出したのは昨年末のAKGのツアーで、彼らも3人のサポートを迎えた7人編成でステージを展開していた。その大編成の理由は、AKGもくるりも音楽的な必要に因るものだろうが、ここでもその無意識を探れば、震災以降の経験を通して、大勢の人間が集まって一緒に音楽を奏でることとの意味と価値、そこに生まれる素朴な歓びをあらためて感じたからではなかったか。実際のところ、この日のライブは故郷の懐かしい集いのように、ゆっくりと、しかし確実にステージと客席の間に親愛の情がいよいよ深まっていき、最後には全員がその情の深まりを実感してうれしくなるというライブだった。


1.everybody feels the same
2.ロックンロール
3.Morning Paper
4.赤い電車
5.WORLD'S END SUPERNOVA
6.惑星づくり
7.pluto
8.crab,reactor,future
9.falling
10.dancing shoes
11.argentina
12.soma
13.マーチ
14.街
15.ハローグッバイ
16.ばらの花
17.太陽のブルース
18.Baby I Love You
19.ワンダーフォーゲル
20.東京
[ENCORE-1]
1.REmenber Me
2.RIVER
[ENCORE-2]
1.White out
2.シャツを洗えば
3.春風
4.地下鉄
5.Glory days
クョスコニョ    [1] 
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