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ツアー”とろみを感じる生き方”、そのファイナルである。会場の市川市文化会館は市川と言いながら最寄りの駅は本八幡というトリッキーなホールで、でもいかにも郊外都市の文化会館という感じの立派な建物だった。それはともかく、ツアー中盤戦のステージをサンプラザで見たときには、「最高に素晴らしいというわけではない」という感じだったのだけれど、こうしてファイナルのステージを見た後ではその表現を訂正しなければいけないかもしれないと思い始めた。と言っても、”あのサンプラザのステージもやっぱり素晴らしかったんだ”と思い直したわけではなくて、やはりあのサンプラザのステージも、そしてこの日のファイナルのステージも僕の心を鷲掴みにするようなステージではなかったことは間違いないと思う。が、その一方で、本八幡の夜道を歩きながら、確かにこの日のライブに感じ入っている自分がいることを確認したのも事実で、そのなんとも言い知れない温もりのようなものを”とろみ”と呼べば、僕はまさしく彼らの術中にはまってしまったんだろう。この日の会場を埋めたほとんどの人間がそうなったことは間違いなく、そしてその多くは帰りにカラオケで「京都の大学生」を熱唱したはずである。2009年を締めくくる最後のワンマンの最後の曲のイントロを弾き始めたら、ペダルを踏み忘れていて音が出なかったことが、2009年の岸田繁の何かを暗示しているとは思えないが、そうしたこともまた”とろみ”のなかに含まれているのかもしれない。つくづく、一度はまったら抜け出せないバンドだと思う。
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