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5月にリリースしたアルバム「CHRONICLE』のタイトルをそのまま冠したツアーのファイナル。ドラムは、レコーディングにも参加している刃田綴色(東京事変)が担当した。
まずストックホルムからの”帰朝報告”があって、そこでの成果の結晶を誇らしく提示するこの日の曲順で新作の曲を聴くと、やはり彼らの音楽の核にあるのは重厚なコード感であることを改めて実感する。で、最初にその部分がガツンと押し出されたから、その後の軽やかでポップなナンバーでも自然とそのアンサンブルの面白みに意識が向けられることになるセット・リストだったんじゃないだろうか。中盤のアコースティック・コーナーではユニコーンばりのグダグダな展開もやはりしっかりと彼らの個性のひとつになっていて、ユニコーンとの比較で言えば、確信犯的な阿部義晴に対していかにも天然な金澤ダイスケのキャラクターがフジファブリック流を生み出していた。で、その天然キャラがひょんなことから暴走して、松崎しげるナンバーを熱唱しながら客席に下りるひと幕はファイナルならではの破調なのだろうけれど、全体としては自分たちの音楽を一生懸命にかき鳴らし、しかもそのことがなんとも楽しい、というバンドの青々しいとでも言うべき現在を率直に伝えるステージだった。なかで、山内総一郎の手クセに流れないアグレッシブなギター・ソロはとりわけ印象的だったが、逆にしばしばフラットする志村正彦のボーカルがちょっと気になった。もっとも、この日の照明が象徴的に伝えていたフジファブリックのカラフルな音楽性は、他でもない彼のソングライティングの豊かな広がりに負うものであることは言うまでもなく、特にそのバラエティの豊かさがバンドとして十分に表現されたことこそが今回のステージの核心だったと言うべきなのかもしれない。
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