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  11月2日 YUKI@日本武道館
   九段下の駅から地上に出てくると、かなり切実な調子で「チケット譲ってくださ〜い」という男性の声が聞こえてくる。直前にビデオ収録のプラン変更により、カメラ・スペースになるはずだった席が何席か発売されたようだが、そんなことではこの日のチケットのプレミア度に大した影響は与えなかったようだ。
 開演時間が迫り、諸注意の場内アナウンスが流れ、「間もなく開演致します」という結びの言葉に呼応して拍手が巻き起こる。他のライブでは、まあ、こんなことはない。いかにオーディエンスが開演を心待ちにしているかという証だろう。
 ソロ・デビュー5周年を期してリリースされたアルバム『five-star』をフィーチャーした記念のライブ。大阪城ホールで2デイズ、武道館で2デイズのスペシャルなステージ、そのファイナルである。
 まず「不思議の国のアリス」風の映像が映し出され、ウサギやら籠の鳥やらが踊った後で、その部屋の扉が開くと、その向こうにワインレッドの衣装を身に着けたYUKIが登場するオープニングからして、じつに鮮やかだ。YUKIが歌い始めると、その声のシャキッとした質感がめくるめく世界のなかでとりわけ確かなものに感じられる。その展開は、ファンタジーを基調としていながら、あくまでもフィジカルなエネルギーの高さでオーディエンスを圧倒していくステージ全体の有り様を象徴していて、というのもステージ上のYUKI はいつでも夢の物語の主人公などでは決してなく、あくまでも生身なリアリティーを持ったパフォーマーだった。彼女が冒頭のMCで「今日はみんな、YUKIを抱きしめに来てくれたんだよね?」と問いかけたのも、つまりは「私を抱きしめた感覚をフィジカルに感じさせてあげるよ」という宣言だったのだろうし、武道館を埋めたオーディエンスの一人ひとりのそんな実感を彼女は抱かせただろうと思う。そして、そんな大仕事を可能にしたのは、映像やステージセットで醸し出すギミカルなファンタジーではなくパフォーマー自身の肉体であり、そこから発せられる声なんだ、という彼女自身の覚悟だろう。そのライブ観はじつにロック的だし、だからこそ彼女がただのキラキラしたポップ・アイコンに止まらないのだろうとあらためて思った。
 演奏面では、彼女のそうしたロック性をがっしりとビート化している松下敦(ZAZEN BOYS)の芯の太いドラムがなんともかっこよかった。
クョスコニョ    [1] 
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