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「アコギなKILLER GIG 2006」と題されたツアーの初日。今回は、これまで同様の3人編成ながら、キーボード/アコーディオンの前野知常に代わって、バイオリンのクラッシャー木村を迎えてのステージだ。
例によって、KAIが用意したセット・リストはまず1曲目でオーディエンスをハッとさせる。15年以上前に発せられたその“ステイトメント”は、21世紀の今、いよいよビビッドに感じられるものだ。
♪だれかが奪おうとするまで 君のかわりはいると思った♪
そして、それに続く2曲の大ヒット曲と合わせ、最初の3曲で今回のステージがやはり昨年までのアコースティック・セットとは確実に違う味わいをもったものであることがわかる。
言うまでもなく、その違いをまず際立たせるのはクラッシャー木村のバイオリンだ。たとえば「ビューティフル・エネルギー」で聴かせたたおやかなフレーズは、この曲のベースに流れている少年性のきらめきとでも呼ぶべき感覚にくっきりとした輪郭を与えてみせる。総じて、彼女のバイオリンはKAI音楽に通底している大いなるロマンティシズムを鮮やかに浮かび上がらせるのだが、しかしそのフレーズは決してウェットな抒情に流れない。それは、KAI音楽のロック性がそうさせるのだろうし、そのきりりとした音楽性が彼女の個性でもあるように思われる。そんなバイオリンの演奏に切り込むように入り込んでくる、KAIのハープがまた印象的だ。このハープとバイオリンのコントラストはそのままKAI音楽のダイナミックスを反映しているようで、だからステージが進行していくとシンプルなアンサンブルでありながらたっぷりとした情感が押し寄せてくるかのように感じられるのだ。松藤のギターは、そうした情感のたゆたいを確実にドライブさせていく。ツアー前のインタビューで「つねにリズムを意識したい」と語っていた通り、たとえば細かいフィンガー・ピッキングのフレーズであっても、大きなストロークのグルーヴを感じさせる演奏が冴えていた。
「こんばんは、グレープです」から始まったKAIのMCは、このツアーのリハで使った怪し気なスタジオの話、そのスタジオの所在地がデビュー当初住んでいたマンションの近くであったことなどを語り、そして「最初はそんなこと全然思ってなかったんだけど、そのリハ・スタに通ってる間に、これは“初心に帰れ”ってことなのかなって」と、言うのだ。その言葉と今回のステージの内容をどんなふうにつなげるか、なんてことを考えながら観るのも面白いかもしれない。
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