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  8月2日 グルーヴァーズ、THEピーズ、SPITZ@新宿ロフト
   コマ劇場裏の通り、まだ暮れ切ってはいないけれど、十分にいかがわしい歌舞伎町的雰囲気のなかに、いかにも堅気な感じの人たちがチケットを求める紙切れをかざして立っている。”やっぱり、プレミア・チケットなんだ”と思いながらロフトに入って開演を待っていたら、最初に登場したグルーヴァーズ藤井一彦の最初のMCは、「チケット、手に入れたんだ。良かったね」から始まった。新宿ロフト30周年を記念したライブ・シリーズ。この企画ならではの豪華にして、けっこう意外な組み合わせである。THEピーズとSPITZは来年20周年だそうだが、グルヴァーズも含め、90年前後にシーンに登場し、良くも悪くもバンド・ブームの波に乗ることなく、終始マイペースなスタンスでキャリアを積み重ねてきた3組だ。この日は、その3様の個性が真っ向からぶつかって、「浪速の闘拳」の世界戦よりも遥かに迫力のある、そして味わい深いイベントになった。
 最初に登場したグルヴァーズは、藤井一彦のMCによれば「仲間に入れてもらった」ということだが、とにかくこの日のステージがなんともうれしいようで、だからこそ飛び切りアグレシッブな演奏を展開。たっぷりとした8ビートに重みと鋭さを兼ね備えたギターが乗っかって、ブッ飛ばしていった。イベントの主旨を踏まえて披露された、彼らが新宿ロフトに出演し始めた頃からやっているナンバーは♪ずっとこんな調子 夜を使い果たしそう♪(「現在地」)と、歌う。それはまさしく新宿ロフトで過ごす夜にふさわしい歌詞だが、同時にバンドの始まりから変わることなくタイトな8ビートを鳴らし続け、しっかりと生き残ってきた彼らの意気を感じさせてなんとも痛快だった。
 ♪ずっとこんな調子♪がグルーヴァーズのステイトメントなら、2番目に登場したTHEピーズは1曲目から♪好きな方へ行け 死ぬまで♪(「サイナラ」)と歌ってみせる。シンプルなロックンロール・サウンドとぶっきらぼうなボーカルはいかにも洗練とは縁遠い感じだが、その音楽のガサガサとした印象がそのままTHEピーズというバンドのタフさを物語っている。決して平坦ではなかったキャリアの果てに♪好きな方へ行け♪と歌う彼らには、やはりそれしかないんだと思い定めた者の強さがある。そんな覚悟めいたものをトボけたもの言いで覆い隠してしまう恥じらいまで含め、なんともチャーミングで心躍るロックンロールを聴かせてくれた。
 先手必勝のイベントで、先に登場した2バンドがかくも颯爽としたパフォーマンスを披露した後で演奏するのはかなり分が悪い感じだったが、もちろんSPITZだって負けてはいない。ただし、「ホントは僕らが最初に出たほうがいいくらい緩い感じなんですが」と最初に草野マサムネが語った通り、決してストロング・スタイルで挑むのではなく、飽くまで自分たちの土俵に勝負を持ち込むようなシングル主体のセット・リストでステージを進めていった。そのなかで、「僕らもかっこいいビート・パンクみたいな感じで最初はがんばってたんですが、それだとグルーヴァーズやピーズみたいなバンドにはかなわないと思って、路線変更した最初の曲です」と言って、「恋のうた」を堂々とやってしまう彼らもまたじつにタフだ。
 3組のバンドが、それ以上でもそれ以下でもない形で自分たちの持ち味をしっかりとアピールすることでお互いへの敬意を表明し、ひいては新宿ロフト30周年を祝う気持ちを表現してみせた、じつに中身の濃い3時間だった。
クョスコニョ    [1] 
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