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  7月28日 HY@沖縄コンベンション劇場
   大きな弧を描いて宜野湾を縁取る道をゆっくりと短パン姿の若者たちが歩いていく。ちょっと上り坂になったその先の丘の上に、目指す沖縄コンベンション劇場は在る。20日前の台風がずいぶんと昔の出来事に思えるような空の青さが胸の高鳴りをさらに増幅させる。劇場前の広場のようなスペースにはすでにたくさんの人だかりが出来ていて、その人だかりから伝わってくる幸福な空気がこれから始まるの時間の質を予告しているようだ。開場したロビーで交わされる言葉に耳を澄ましていると、いろいろな地方の言葉が聞こえてくる。全国からファンが集結しているのだろう。“WATTA SHINKER’06 TOUR〜mu-ruiinchu〜”、3週間遅れのファイナルである。
 ステージの幕開けを飾るのは、最新作『Confidence』の最後に収められた「この物語」だ。♪全てが繋がって僕という現在が在る♪と歌うこの曲は、そのままHYの現在を伝え、ということはこのツアーが描き出す“物語”の意味までも明らかにしてくれる。
 今回のツアーのステージ・セットは、HYというバンドの原点とも言うべき沖縄・北谷のカーニバルパーク・ミハマを模して作られている。彼らはその一隅でのストリート・ライブから始めて今回2度目の47都道府県ツアーに挑むまでになったわけで、ということは今回のステージ上には彼らの“最初”と“現在”とが並んでビジュアル化されるツアーということだ。そして、その“最初”と“現在”とを繋げる糸が織り成す“物語”をあらためて見つめ直すこと、つまりはバンドとしての自分たちのアイデンティティを再確認することこそが今回のツアーのテーマなのだろうから、それだけの“物語”をしっかりと語るためにはどうしても3時間半という時間が(この日はじつに4時間に及んだわけだが)必然だったのだ。さらに言えば、彼らが歌で物語ることにとりわけラディカルで、しかもシャーマンな要素さえ実感できる沖縄人であることは、その必然をいっそう強いものにしていたと思う。ブルース・スプリングスティーンを引き合いにだすのはさすがに気が引けるが、それにしても自分たちの存在の根本に歌というメディアを使ってさかのぼっていこうとするとき、その語りはどうしてもたっぷりとしたものになるのだろう。
 もっとも、そんな大きな“物語”を語るのにも決して堅苦しくならないのがいかにもHY流で、コントめいた構成にもこの日は随所にアドリブが入ったりして、そのあたりにもファイナルならではの余裕がうかがえた。初めてツアー全カ所に帯同したストリングスやアンコールで登場するゴスペル・コーラス隊もその“物語”のドラマ性を高めるのにいかにも効果的で、そうした試みまで含め、彼らの“物語”はたっぷりと起伏に富んだ、そして十分にロマンティックな展開と結末を披露してくれた。
クョスコニョ    [1] 
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