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 2004 秋 
 TITLE: Mr.Children『シフクノオト』 
 DATE: 2004/05/06 

 こういうアルバムがいちばん困るわけである。誰も悪く言わないし、手放しで持ち上げるのはなんだか体制に与しているような気にもなるし。名前の大きさに内容が伴っていないような作品であれば無視すれば済むけれど、そういう作品とは対極にある仕上がりだ。たとえば2曲目の「PADDLE」という曲。ひらメロがズンズンズンズンという感じで進んでいくと、波乗りどころかサーフィンの板に触ったことさえないこの僕でも、板に身を預けて沖に繰り出していくときの緊張と胸の高鳴りを具体的な感覚として体のなかに感じることが出来る。そして、歌詞の内容を何度か頭の中で転がせば、その板に身を預けている体感が新しい時間に向かって暮らしを重ねていく日々の実感と見事に重なって、波乗りをモチーフにしたこの曲が一度も波乗りをしたことのない僕の歌にもなってしまうのだ。あるいは4曲目の「くるみ」。♪今 動き出そうとしている 歯車のひとつにならなくてはなぁ♪というフレーズの“なぁ”という詠嘆の終助詞がその実感そのままのメロディにのっているのを聴くと、“そうだよなぁ”とこちらも詠嘆の終助詞付きで同意してしまう。

 このアルバムで聴くことができる音楽はどれも、たとえば僕の生活の実質に見事に適うものばかりだ。だから、僕の気持ちのなかにとても自然に入ってくるし、気持ちのなかのとても深い部分で共感することが出来る。いいアルバムだと思う。

 ところで、「News23」でも演奏して大きな話題を呼んだ「タガタメ」という曲のなかに♪明日 もし晴れたら広い公園へ行こう♪というフレーズが出てくる。一方、GRAPEVINE の田中和将は最新作『イデアの水槽』に収められた「公園まで」という曲で♪余計な言葉よりも 公園までの数分の 余計なブルース♪と歌う。子供を連れて公園に行き着くという局面が、奇しくもこの二人の優れたソングライターの資質の相違を浮き彫りにしてみせている。興味のある方はぜひ「公園まで」もご一聴を。

 
   CHARA『A Scenery Like Me』 2004/02/16
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